別海町ワークショップ「テレワークでまちの未来を考える」レポート

Text: NAGI GRAPGHICS 山本 唯 nagi-graphics.com

2016年の3月30日、北海道別海町に拠点を置く一般社団法人Be-W.A.Cが日本マイクロソフト株式会社とMake It Creative 一般社団法人の協力を受け、町の高校生を対象に「テレワークでまちの未来を考える」というテーマのもと、ワークショップを実施した。

北海道別海町の本覚寺で開催され、別海高校の生徒13名が参加した。日本の古き良き文化や伝統を感じるお寺の本堂で、新しいアイディアや希望を持った高校生達が集ったワークショップの模様を本レポートでは、お伝えする。

今回のワークショップでは、各3〜4名1チームで、高校生チームを3チーム、大人チーム1チームにわかれ、チームごとに筆記用具が用意されたテーブルに着席した。
各テーブルに置かれた、巨大なジャンボ・ポストイットに、開始前から何に使うんだろう?と興味深々な生徒たち。

ファシリテーターより1日の流れについて説明があった後、早速アイスブレイクのお題が発表された。

「ここにあるものすべてを使って、このボール(オレンジ)を遠くまで転がせる装置をつくってみよう!」

テーブルに用意されたのは、ペットボトルやストローなど、どこにでもある素材。これらを駆使し、組み立て、5分間でオレンジを転がす装置を作るというものだった。各チーム試行錯誤の末、装置を作成した。大人チームを含む各チームが、装置を使ってボールを遠くまで転がそうとするも、どのチームも同じぐらいの距離。最後の高校生チームが取り出した装置は、なんと何も手を加えていないテーブルの上にあったジャンボ・ポストイット。
大きく、もともと傾斜のある形をしていたジャンボ・ポストイットを生かし、一番遠くまでボールを転がすことに成功!
「ここにあるもの何でも使って良い」という、ルールの意図を読み取り、生まれた発想が勝利をもたらした。この「Think out Box(箱の外に出て考える)」という考え方はワークショップ全体を通して大切になることを肌で感じられたアクティビティだった。

次に、別海町の課題を考えるセッションが行われた。別海町は「消滅都市」の一つとして挙げられており、人口減少が課題であることを学んだ。

これは別海町に限られた話ではなく、他の地方でも課題になっている事だが、そんな中、別海町で行われた中高生向けのアンケートで意外な数字が出ていた。「別海に将来帰ってきたいと思っているか?」という質問に対して、「住み続け続けたいと思っている」と答えた中高生は48.9%という非常に高い割合だった。
さらに「判断できない」と答えた中高生が全体の32%。つまり、判断できる材料を与えられれば、住み続けたいと思う人の割合が増えることを意味している。こういった数字・事実に合わせてどう課題を改善していくのかが、今回のワークショップでの大きな目的となった。

テレワークに馴染みのない生徒、もしくはテレワークを知っていても方法がわからないという生徒向けに、テレワーク体験も行われた。各テーブルに用意されたSurfaceを利用してSkypeやOffice365をもちいて、オンライン演習を行い、テクノロジーを実際に活用した。

テレワークへの理解を深めた後、別海と同じく人口減という課題を抱えながらも、2011年初めて人口増に転じた「成功例」とも言える徳島県神山町に住む4名とオンラインでパネルトークする機会が設けられた。

今回は、神山町のシェアオフィスやサテライトオフィスで、テレワークを実践しているプログラマーの本橋大輔氏、エンジニアの辰濱健一氏、プログラマーの山下実則氏、3Dモデラーの寺田天志氏の4名とSkypeでつながった。
ファシリテーターが神山町や彼らの仕事スタイルに関して質問する間、生徒たちはその話に熱心に耳を傾け、パネルトークで得た内容をポストイットにメモした。メモのコツも事前にレクチャーを受けており、生徒たちは、パネラーである神山町の人々の「考えていること・得たもの・感じていること・痛み」をカテゴリーごとに書き留めた。
パネルトークの終盤で設けられた質疑応答で生徒たちは、「都会で働いていた頃と神山に移住した後と、給料は変わらない。むしろ結果的に残るお金が増えた」、「都会と比べてネット環境がいい」という意外な回答に驚き、よりテレワークへのイメージを明確につかめた様子だった。

神山町とのパネルディスカッションの中で得た学びをカテゴリーごとに整理

お昼には、特別に用意された無添加で体に優しく美味しいカレーランチでお腹を満たし、パワーを注入したところで、午後からはこれまでに得たことを生かした課題に取り組むことになった

ここで、この先創り上げていくビジョン「パーフェクト別海2025」というテーマが発表される。

10年後の別海町にいる自分を想像し、その自分から見て、パーフェクトな別海の姿・条件などをブレスト(ブレインストーミング)する。ブレストのルールである「質より量」「アイディアは見出しのように書く」などの説明も受けた。「クレイジーなアイディアだけを出す時間」「出たアイディアからさらに発展させたアイディアを生む時間」など、考える時間は、5分・3分など細かく仕切られ、生徒たちは限られた時間の中で 集中し、アイディアを生み出していった。生徒たちは、それをポストイットに書き出した後、次々にジャンボ・ポストイットに貼り出した。

ワークショップもいよいよ大詰め。ブレストで出たたくさんのポストイットを使用し、フューチャー・ブリッジ・マップ(未来へかける橋マップ)を作り上げていく。これは、一枚の用紙にポストイットを階段状に貼り付けたもので、理想の未来を一番上段に配置し、現在の課題を一番下段に配置。上段にある理想の未来に向かって橋をかけるよう、実際に行うべきこと(行ったこと)を配置していくものだ。今回は「若い人に魅力的に映るようなビジョンを考える」という縛りが設けられた。

まず、個人で考えたビジョンをグループで共有し、その後、各チーム 「パーフェクト別海2025」のデザインを考えた。それぞれ熟考した末、各高校生チームで出したテーマは「世界各地の酪農に従事している人と交流ができる町」「IT・農業に興味のある若者を増やしていく町」「第二の人生を歩みたい人が、新たな可能性をみつけられる町」だった。
ブレストで出たアイディアが書かれたポストイットを使い、どうすればテーマに沿った未来になるのかをフューチャー・ブリッジ・マップに貼り付け、その結果、各チーム「パーフェクト別海2025」へ向かうアクション・プランとなる架け橋を明確にした。

これまでフューチャー・ブリッジ・マップを使ってデザインしてきた「パーフェクト別海2025」をシナリオとし、寸劇として発表するのが、今回のワークショップのゴールだ。この発表には、別海町教育委員会の教育長、真籠毅氏、北海道富良野緑峰高等学校の教頭、後藤卓氏、別海町のまちづくりに携わる方々も審査員として同席した。ファシリテーターのアドバイスのもと、演技を練習し、いよいよ発表の時となった。生徒たちは、恥ずかしがる事なく、一生懸命演技し、仲間とともにデザインしたビジョンを伝えた。

どのチームの発表内容も素晴らしいものだったが、「世界各地の酪農関係に従事している若者たちと交流できる町」をビジョンとして掲げたチーム「ウエハース」が審査員から最も評価を得た結果となった。酪農が盛んなカナダに、別海町長、自らが視察に赴き、町民と協力して別海にアイディアを持ち帰り、別海町で実施するというもので、その際、たくさんの外国人を招き、その後もスカイプを通して交流が続き、ITを活用して世界中の情報が知れる別海になった、というストーリー。「町長自らが視察に行き、模索し、行動を起こすという発想が豊かだった」と好評を得た。

最後に発表をしたのは一つのテーマだったが、そのテーマに向かって集中できたこと、多くのアイディアを出せたという事実は、彼らの自信にもつながったことだろう。

審査委員長の一般社団法人Be-W.A.C.代表の山本瑞穂氏は「テレワークという働き方があるということを知って、その上で進路を選択していって欲しいと思う。そして、今日のワークショップのようにたくさんのアイディアとワクワクした気持ちをもって、将来、別海に戻ってきてくれるようなことがあればいいなと願っている」と話した。

パーフェクト別海2025のビジョンを創り上げた、彼らの表情は、清々しく希望に溢れていた。